第壱百五話: 「両国の大花火」 付「ケン幸田のショート・オピニオン」
毎年7月下旬から8月にかけて、全国各地の大きな河畔や湖畔、 あるいは海浜で花火大会の催しを行い、納涼の幕開けと致しますが、 その起源は江戸時代の享保年間に遡り、旧暦の5月28日、川開きの初日祭事として、 隅田川の両国橋の上下流で盛大に花火が打ち上げられたことに始まりました。 花火は橋の上や岸から眺めても綺麗でありますが、やはり川に船を浮かべ、 間近で眺めるのが最高とされます。 涼しい川風に吹かれながら、芸者の三味線の音色を聴きながら夜空に挙がっては 消えてゆく花火を眺めるのが、江戸の風流でした。 その為、隅田川の川開きの時は、船宿の船は全て出払って、 当時250m程だった川幅が船でいっぱいになり、船伝いに向こう岸に 渡れる程だったそうです。 花火尽きて美人は酒に身投げけむ 高井几董 花火の発明は、17世紀中盤、奈良出身の鍵屋弥兵衛が火薬をおもちゃの花火に することに成功し、これを売り出したもので、享保18年(1733年)江戸で 流行していたコレラの退散を願って、両国で大花火を打ちあげたのが、 流行の始まりでした。 後の文化7年(1810年)鍵屋の手代だった清吉が独立し玉屋を創立し人気を...