1. 食生活では迷わずに濃い色の果菜を選択しましょう
食材としてのポリフェノールは特に赤紫色の果菜が望まれます。
動脈硬化を防ぎ、長寿をもたらす果実や野菜の赤紫色素。
他の食材ではカバーできない独特の効果があります。
赤紫色のポリフェノールや類似物質は、ブドウポリフェノール(スチルべノイド)、
アントシアニン(anthocyanins)、ベタレイン(betalains)に代表される色素です。
果菜を日常的な食生活に採り入れるには美味しくて安価でなければ続きません。
赤紫色の安価な野菜で身近なものは大根類、かぶ類、イモ類、玉ねぎ類、
アブラナ類、シソ類など。
果物ではブドウ類、プラム類、ベリー類。
かなり広範囲になりますが、同じ種類間で比較して、赤紫色が必ずしも
ベストの味でもなければ、安くない食材も多々あります。
それでも赤紫色果菜は健康に寄与する優れた食材.
可能な限り最優先の選択をするのが賢明です。
どうしたら美味しく食べることが出来るか。
どうしたら安く買うことが出来るか?
やはり工夫が必要です。
多くの食材が通年で入手できる時代になりましたが、オフシーズン果菜は
価格が高い割には栄養成分や安全性に言及する販売者は稀(まれ)
果菜を美味しくかつ納得できる価格で手に入れるには、消費地での「旬」と
「最盛期」を知り、手間暇かけても近隣の生産者から直接買う方法を
見つけることです。
第1回でご紹介できない赤紫果菜は数回に分けて順次ご紹介していきます。
2. 紫キャベツ:Brassica oleracea
紫キャベツ(写真下)はドレッシングの酸味(各種ビネガー類)が加わると写真上のように
赤紫の鮮やかな発色をします.
イタリア料理が盛んになるにつれ国産が増えたチコリ系(chicory)は様々な料理に
使用されるようになりましたが、紫キャベツは意外にも日常生活から疎遠。
日本人にはコリコリ感が強く、硬い食感を嫌がる人が多いようですが、
塩やお酢にしばらく漬けて柔らかくすればやや食べやすくなります.
野菜サラダはアクセントの彩(いろどり)さえあれば、全体が緑色でも不思議に感じない
健保王国日本の国民性.
サラダの彩(いろどり)程度では健康に寄与しませんから、食感は劣るとも赤紫野菜を
もっと、たくさん食べましょう.紫キャベツの価格は500gくらいの大きさで300円前後.
最盛期は200円くらいになる地域もあります.
いわゆるキャベツよりはだいぶ割高ですが健康面を考えれば価値があります。
紫キャベツ(写真上:ホーチミン市)はチコリ系に似ていますが、アブラナ系.
日本人の野菜選びは、水耕栽培もハウス栽培も色も区別しませんが、
アジア人、欧米人は少々違います。
紫キャベツの健康面の良さを周知しており、日常的に食しますから
野菜売り場で探すのに苦労はありません.
3. チコリ系:Cichorium intybus(chicory)
チコリ系(chicory)は同類のトレビス(Trevise、Treviso)、ラディッキオ(Radicchio)を含めて
外見は紫キャベツによく似てはいますがアブラナ系ではありません。
日本は冬場がシーズンですが、通年で輸入されています。
写真上は尺皿の一塊.これで300円前後になりますから、とても日常的には使えません.
(写真上左)ハンダマ:Gynura bicolor(Asteraceae)は沖縄発の呼び名.
(写真上右)キンジソウ(金時草).この個体は特に紫色が発色していない.
4. ハンダマ:Gynura bicolor(Asteraceae)
ハンダマはスイゼンジソウ(水前寺草)、キンジソウ(金時草)とも呼ばれますが
源流は同じ.一束で120円から150円.数少ない値ごろな赤紫系の葉野菜です。
2万種以上といわれるキク科の系統.キク科は園芸種、帰化種が多いために名前が多すぎて
混乱しています。
一般人は学者のように分類にこだわるより、食材としての安全性を優先すべきでしょう.
アカダマは抗酸化物質のアントシアニンが豊富ですが、テルぺノイド、アルカロイドも
確認されており中国の一部やマレーシアなどで大腸ガンや炎症疾患の民間療法に
使用されていました。
中国の呼び名は紅鳳菜(Hong Feng Cai)
マレーシアではSambung Nyawa Ungu
含有するヘキサン、メタノール、エチルアセテートなどが
細胞毒の制御、増殖(cytotoxicity)に関与するとの報告があります。
最近は沖縄だけでなく首都圏でもポピュラーになりましたが、
いまだに安全摂食量が不明なため一時に食べ過ぎないことでしょう。
サラダ、味噌汁、てんぷらにすることが多いようです。
摂食量に気を付けて食すればコストパフォーマンスの良いお薦め野菜.
5. ダイコン:Raphanus sativus
(写真上下)紫大根と呼ばれている農芸種.最盛期ならば300gから500g/個で100円前後.
(写真下)農芸種として開発された紅くるり大根.
民間業者により開発されたもの.最盛期の価格は上の紫大根と同じくらい.
生産地、販売場所によっては高価な場合があります.
色で解るようにアントシアニンの量が多く、抗酸化力が強い優れもの.
遺伝子操作で改良したものでは無いとのことですから安全性が高いと推定できます.
塩漬けの生食が美味しいお薦め野菜.
6. 蕪(かぶ):Brassica rapa(Brassica campestris)
アブラナ科アブラナ属の代表的品種.英語でTurnipという部類.
世界中で様々な外見の種類が栽培されている。
首都圏で日本中の半分くらいは生産しており、バラエティーも豊富.
価格も中型3個(約600gくらい)で150円から250円.
1個が500gを超えるような大型もありますが人気は今一つ、価格は中型と変わりません.
出来るだけ赤皮で中身も赤色が刺しているものが望ましい.
蕪(かぶ)や大根類は縦切りと輪切りでは文様が異なって出てきます。
切られた蕪の上下写真は同じ「赤い茎の赤かぶ」.上の写真左が縦切り、下の写真左が輪切りです.
写真上右の白い茎の種は中身もほとんどが白色です.
7. ビート(ビーツ):Beta vulgaris vulgaris(beat)
写真上はダラット(ベトナム)の市場で売られているビート(中国産の可能性があります)
写真下は長野県産.下段写真はテキサス州ヒューストンで購入したビーツ.
根茎の部分は色、形が各々特徴的.
ビート(ビーツ)はカブや大根と外観は類似していますがアカザ科に分類され、
アブラナ属ではありません.
ニャチャン(ベトナム)の市場で売られていたビーツ
ビーツはロシアン・スープのボルシチ(写真上)の中心的素材.
ジャガイモと大根、二つが混合したような食感があります.
ビートの滴るような濃赤色はアントシアニンではなくベタレイン(betalains)と呼ばれている
インドール・アルカロイドの色素系統で多糖体として存在します.
ブーゲンビリアの赤紫色はベタレイン色素です.
赤色のベタレインはビーツ由来で名付けられた名前.
最近になり、亜硝酸ナトリウムの代用として脚光を浴びています.
亜硝酸ナトリウムはハム、ソーセージなど加工肉やタラコ、イクラの
水産物に着色と保存を目的に使用される有害物質。
「加工肉の亜硝酸ナトリウムはトップクラスの発がん物質(WHO:IARC)」
日本は欧米に較べ、ビーツ食の歴史が無いためアジア、米国に較べ3-5倍の価格
(100gが90円前後ですから500gくらいの大玉で1個400円を超えます)
写真下の米国産ビーツは4-500gが3個で2ドル50 セント
(2016年2月12日現在:ヒューストン).
他では代えることがむつかしい健康に非常に良い食材ですが、コストダウンが課題です.
8. 抗酸化物質ポリフェノールとは
抗酸化能力の不足は抵抗力不足を意味し、生活習慣病や癌などの
被害を受けやすくなります。
ポリフェノール含有食材やサプリメントの摂取は抗酸化能力を増強しますが
ほとんどの方は摂食量が不足しています。
植物のポリフェノールは強い抗酸化力で
自然界の様々なストレスから身を護る物質の総称。
その種類は5,000種を超えるといわれるほど豊富。
学者や愛好家が争うように細々(こまごま)と名前をつけましたが、
ブドウポリフェノール、カカオポリフェノール、緑茶ポリフェノールなど
植物名で簡単に表現するのがベスト。
なぜならば同じ分子構造であっても存在している植物により機能、効能は様々。
最大の特徴である抗酸化能力も様々です。
それは植物の持つ三大栄養素、多糖類、テルぺノイド、アルカロイド、
ビタミン、ミネラルなど多様な物質が複合的に作用しているからです。
アサイー(上の写真)やレスベのアントシアニン類、テルぺノイド類は特別なものです。
他で補うことのできない成分がいろいろあります.