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糖尿病のニュースと解説健康と食品の解説

インスリン分泌を低下させる塩化ビニール製品の環境汚染

これはライムストーンの紋様ですが塩ビ製床材.
1970年代ごろにエルエスアイ社(東京)が開発したいわばフェイク製品です。
今ではアジアを中心にオセアニアにも広まっていますが、東南アジア製は
安価なDEHP*を可塑剤に使用しています。
可塑剤DEHP*は経年により大気に揮発し床材は硬化してきます。
商業施設には大理石、花崗岩の紋様や木材の紋様が印刷されたDEHP*塩ビ床材が
大量に施工されていますが、気化したDEHPが糖尿病や性ホルモン異常をひきおこす
可能性が高く要注意です。
塩ビ製床材や壁装材は家庭にも大量に使用されており、商業施設の
塩ビ製床材、壁装材を加えると吸引量、肌からの吸収量は危険な水準になることが
判明しています。
フタル酸エステルは色々ありますが、フタル酸ジイソノニル(Diisononyl Phthalate)も
安全性には疑義があり、コスト面からも安全なフタル酸系可塑剤は
期待できないと考えるべきでしょう。

 

 

1.塩化ビニール製品の可塑剤フタル酸エステル代謝物が糖尿病を誘発する

ポリ塩化ビニール製の内装用床材、壁装材や輸管チューブなどの医療用器具、
食品容器、玩具などに多用されている可塑剤(柔軟性を持たせる化学物質)の
フタル酸エステル代謝物(Phthalate Metabolites)は10数年前より発がん、
性ホルモンかく乱による不妊、肝臓障害、頭髪異常などの有害性が指摘されていますが、
その環境汚染が糖尿病を誘発するとの論文も発表されています。
論文は
「中高年齢者が環境汚染物質フタル酸エステル代謝物に長期間さらされると
糖代謝機能に影響をうけ、インスリン分泌の低下により2型糖尿病を誘引させる。
それゆえ、フタル酸エステル代謝物(の血中濃度)はインスリン抵抗性のマーカーとなる」
というものです。

 

 

2.フタル酸代謝物による環境汚染レベル上昇は中高年の糖尿病発症を伴う

血中のフタル酸代謝物濃度と2型糖尿病が発症する因果関係が発表されたのは
糖尿病治療誌ダイアベート・ケア(Diabetes Care)。
発表したのはウプサラ大学職業環境医学科
(Department of Occupational and Environmental Medicine)の
モニカ・リンド博士(P. Monica Lind)ら。
ウプサラ大学は1477年王室によって創立された、ヨーロッパのみならず
、世界で最も環境衛生医学が進んでいる大学の一つ。

博士らの研究論文の主題は
「Circulating Levels of Phthalate Metabolites Are
Associated With Prevalent Diabetes in the Elderly.」

(フタル酸代謝物による環境汚染レベル上昇は中高年の糖尿病発症を伴う)
調査の概要
対象者は2001年から2004年にウプサラ地区に居住していた70歳の男女1,016人。
シニア・プロジェクトと称されるこの調査で、リンド博士らは有機物質汚染による
頸動脈のアテローム蓄積など、いくつかの課題を研究発表しています
Circulating levels of persistent organic pollutants (POPs) and carotid atherosclerosis
in the elderly.

血中フタル酸濃度については,採取した血清0.5mLを
液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法
(liquid chromatograph/tandem mass spectrometer)により濃度別に分類。

下記4種類のフタル酸エステル代謝物を対象に、インスリン分泌低下の指標である
プロインスリン/インスリン比とインスリン抵抗性指数(HOMA-IR)の関連を考査。

解析対象のフタル酸エステル代謝物4種類
フタル酸モノ-2-エチルヘキシル(MEHP),
フタル酸モノエチル(MEP: monoethyl phthalate),
フタル酸モノイソブチル(M iBP:monoisobutyl phthalate),
フタル酸モノメチル(MMP: monomethyl phthalate)

結果として中高年齢者が環境汚染物質フタル酸エステル代謝物に長期間さらされると
糖代謝機能に影響をうけ、インスリン分泌の低下により2型糖尿病を誘引させるという
結論に至りました。

 

 

3.モニカ・リンド博士は世界的な新進気鋭の環境医学研究者

モニカ・リンド博士(P. Monica Lind)はウプサラ大学 (Uppsala universitet)出身。
世界有数の医学研究所であるカロリンスカ大学(カロリンスカ研究所;Karolinska Institutet)の
助教授を務めました。

カロリンスカ研究所は1810年に国王カール八世(King Karl XIII)により設立された
由緒ある医学研究所。
ノーベル賞生理学医学部門の選考委員会を主催し、スウェーデンの
医学学術研究の40%を占めるといわれます。
リンド博士は2009年にウプサラ大学職業環境医学科に戻りました。
リンド博士らは,フタル酸がペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)の
リガンド(配位体)であることなどに着目。
受容体(レセプター)とリガンド(配位体)は鍵穴と鍵のような関係。
ペルオキシソームは細胞内に多数存在する小器官。
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)はいくつかのバリエーションが発見され、
おのおの異なる機能を持ちますが、研究者が注目しているのはPPARγ(後述)。

 

 

4.環境汚染物質のフタル酸ビス(2-エチルヘキシル):DEHPとは

フタル酸エステルは熱で柔らかくなる(熱可塑性)ポリ塩化ビニール製の
可塑剤(柔軟性を持たせる化学物質)の一つ。
環境汚染物質として10数年前より発がん、性ホルモンかく乱による不妊、肝臓障害などの
有害性が指摘されています。
フタル酸エステルは内装用床材、壁装材や輸管チューブなどの医療用器具、
食品容器、玩具などに最大70%くらい混入され、製品製造時、使用時、経年による
自然流出(昇華)で生活環境にはフタル酸エステルがあふれているという表現も
誇張とはいえません。
フタル酸エステルはコストが安くパフォーマンスに優れた可塑剤として
ポリ塩化ビニール製品になくてはならない可塑剤。
問題のフタル酸エステルは化学的にフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)と呼ばれる
Bis(DEHP:2-ethylhexyl phthalate)。
有害性を指摘する世論にもめげずに主流の座を占めています。
環境汚染に敏感な先進国では直接に食材や口に触れる可能性がある製品は禁止されたり、
自粛を求められていますが、間接的吸収が懸念されるものの、床材、壁材などは
除かれています。
日本をはじめ、多くの国ではいまだに発がん性が黒ではないという理由により広い分野に
使用され、概算で年間3,000万トンのDEHPが生産されています。

 

 

5.北欧最古のウプサラ大学はライフサイエンスの世界的研究センター

ウプサラ大学 (Uppsala universitet)は王室が創立した北欧最古の大学。
二けたのノーベル賞受賞者を輩出しています。
ウプサラ生物医学センター(BMC:The Uppsala Biomedical Centre)は
生命科学(ライフサイエンス)ではヨーロッパといわず世界でも著名な研究所。
リンド博士らの産業環境医学部(Occupational and environmental medicine)は最も古い学部。
植物分類学で著名なカール・フォン・リンネ(Carl von Linne :1707-1778.)が
卒業生で最初の職業医師といわれます。
リンネ博士の業績が受け継がれ産業公害病の優れた研究が多い。

 

 

6.産業衛生医学者と植物分類学者を兼ねたリンネ博士の珪肺病(シリコーシス)研究

 

カール・フォン・リンネ博士は当時Orsa-disease”と呼ばれていた
不治の珪肺病(シリコーシス:siliscosis)が産業病であることを見出したといわれます。
珪肺は花崗岩を切削するときのケイ素粉などで肺が冒される病。
スウェーデンは世界的に有名な花崗岩(火山岩)建材の産地。
赤系(インペリアル・レッド、マホガニーなど)、青と黒(ブルーパール)、
茶系(バルチックブラウン)の美しい花崗岩建材をいまでも採石していますが、
職業病としての珪肺罹病者が多いことでしられます。
世論の高まりで近年は石材の切断、加工が少なくなりました。
リンネは後に珪肺の予防と防護対策の研究に没頭したといわれます。
職業病の珪肺参考記事が下記にあります。
「けい肺(シリコーシス:silicosis)が怖いグラスファイバー建材」

アスベストによる健康被害: けい肺(シリコーシス:silicosis)が怖いグラスファイバー建材
けい肺が怖いグラスファイバー建材 アスベストの有害性が広まるに連れて、断熱材の選択に関心が 集まるようになりました。 住宅では屋根材、屋根下地材、壁下地材、天井材にアスベスト建材、木造の 断熱材にはグラスファイバーが実績あります。 ビルなど

 

 

7.PPAR:ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体)とは

PPAR(Peroxisome Proliferative-Activated Receptor:
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体は細胞の核に存在し、インスリン感受性、
脂肪のβ酸化などに関わる受容体といわれます。
肥満や糖尿病の先端治療にPPAR研究が引き続きターゲットとなるだろうことは
容易に予測出来ますが、PPARにはいくつかの種類があり未明な部分も多々あり、
研究が進行中です。

a) PPARδ(d)
代謝経路がインスリン感受性を促進する物質として、ハーバード大学公衆衛生スクールの
研究者らによって同定されています。
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)を欠如させたマウスによる実験では、
脂肪肝(fatty liver)発生が確認されており、同様の脂肪肝は人間にも発生して
肝硬変などの肝臓疾患を招きます。
脂肪肝の防止にもPPAR-dが働きます。
PPAR-dを活性化させて善玉サイトカインを増やせば、肝臓への脂肪蓄積過多を防ぐことも
予測できます。
b) PPARγ
普通サイズの細胞ではインスリン分泌を促す善玉のアディポネクチンを分泌させるとも
言われ、糖尿病用医薬品もありますが、大型の脂肪細胞では更なる大型化誘発、
インスリン抵抗性増大など負の作用も示唆されています。
c) PPARα
超低密度リポ蛋白(VLDL)や飽和脂肪酸のトリグリセライド生成を抑制する機能が
認められています。
PPARαの医薬品は高脂血治療に使用されますが、脂肪細胞への
脂肪酸取り込み(脂肪の燃焼、β酸化)、アディポネクチン生成に関わる
受容体を増やす作用などが期待されています。
初版:2012年05月25日
改訂版:2014年11月28日
改訂版:2015年12月04日

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