師走のご挨拶
中国武漢発から2年に亘り世界を翻弄して来た新型コロナウイルス感染症が、
我が日本では、やっと落ち着きを見せて来たところです。
そこに、またオミクロン株という新たな変異株問題が
海外から報じられ、国には、迅速且つ効果的な水際対策に
万全を期して頂きたいものです。
ここ2年間、多種多様なウイルス対策を学習し、実行してきましたが、
中でも注目されたのは「免疫力」を高める食事のことです。
生理医学的に実証されたのが、「ケルセチン」含有食品で、
抗ウイルス(併せて、抗ガン)効果が高いそうです。
その代表的なものが、赤玉葱、赤ブドウ、赤ワイン、リンゴ、ラズベリー、
アスパラガス、モロヘイヤ、ニラ、ニンニク、ショウガ等で、いずれも血液循環を促し、
体を芯から温めてくれる食材です。
血流促進と言えば、冬の味覚の王者・ブリなので、
今回の歳時記は「寒鰤」の話です。
ご健勝を祈り上げます。ケン幸田
「冬の味覚の王者・寒鰤」
冬の海産物と言えば、カニ、アンコウ、アマエビなども美味として人気がありますが、
何と言っても、脂が乗って身も引き締まった「寒ブリ」が最高で、
刺身、鮨、塩焼き、照り焼き、
ブリ大根に代表される煮物、そして鰤しゃぶと、食べ方も豊富です。
回遊魚の鰤は、モジャコ(藻雑魚)と呼ばれる稚魚が九州の南西沿岸海域で生まれ、
2~3年で50cm」に育つと、大回遊が始まり、最適水温を求め、夏は北上、
冬は南下を繰り返しつつ成長し、4~5年かけて80cm6キロ以上となり、
秋ごろからは北海道沿岸海域で、産卵に備え餌を活発に摂り(荒食い)、
冬になると丸太の様に太り、日本海沿岸を南下します。
この際水揚げされる天然親鰤を「寒鰤」と称し、富山湾の氷見鰤、佐渡の一番鰤、
玄海島沖の姫鰤、鹿児島の桜鰤などは有名ブランドとなっています。
昔は、大船渡や熊野灘の鰤漁も盛んでしたが、最近の太平洋岸は養殖が増えて、
季節を問わず魅力ある美味が提供されております。
因みに鰤は、世界でも日本近海にしか居ない魚なので、「国魚」と呼ぶ一派もあり、
同じブリ属の、カンパチ、ヒラマサを含めて「ブリ御三家」とも言われます。
寒鰤は紅一筋を身にかざる 山口青邨
鰤網に立山颪兆すなり 上埜是清
ブリは成長に連れて呼び名を変える「出世魚」として、縁起の良い魚として扱われ、
タイと共に門出や転機を祝う際や正月のお節料理としても(主として西日本では)数百年間を超えて、
日本人に重宝されてきましたが、特に必須アミノ酸を多量に含む高栄養健康食品としても、
医者や栄養士の推奨の的となっております。
血流を促進するDHA,EPAや脂溶性ビタミンEを豊富に含み、中性脂肪、悪玉コレステロールを減らし、
動脈硬化や高血圧を予防すると共に、疲労回復に良いビタミンBや貧血予防の鉄分もあり、
アルコール分解酵素のナイアシンが肝臓機能を改善してくれます。
出世魚の呼称は、全国各地で十数通りあると言われますが、その代表例としては成長順に、
東京のワカシ、イナダ、ワラサ、ブリ、大阪のワカナ(ツバス)、ハマチ、メジロ、ブリ、
富山のツバイソ、フクラギ、ガント、ぶり、
福岡のツバス、ヤズ、ワラサ、ブリを挙げておきます。
ひまの駒鞭うつ鰤の行衛かな 池西言水
老妻の前三尺の鰤据はる 山口青邨
女あり父は魚津の鰤の漁夫 高野素十
ころがされ蹴られ何見る鰤の目は 加藤楸邨
なお、「鰤起し」という季語がありますが、寒鰤は雪が降るたびに美味となると言われ、
鰤漁が盛んになる冬の雷が「寝た鰤を起こす」豊漁の前兆と言われるもので、
関連する冬の季語としては、通常は夏の季語である雷についても「寒雷」「冬の雷」や、
雪が降る前に雷が鳴るのを「雪起し」という用語に相通じるものがあります。
佐渡の上に日矢旺んなり鰤起し 岸田稚魚
冬の雷家の暗きに鳴り籠る 山口誓子