「カシリビマブ」「イムデビマブ」「ソトロビマブ」
1. 誰に投与されたか、いまだに不明なモノクローナル抗体カクテル療法
COVID変異株感染治療に抗体カクテル療法といわれるモノクローナル抗体の「カシリビマブ」と「イムデビマブ」(casirivimab/imdevimab)を混合した専用医薬品が2021年7月19日に特例承認され、中外製薬が日本における開発権および今後の独占的販売権をロシュ社より取得しています。
ところが、試験的な少量にせよ、すでに投与されているはずですが、いまだにその現場からの声が聞こえてきません。
厚生労働省では第5項の参照に添付した(抜粋)保健所への通達のように「入院して点滴」などかなりハードルの高い要求をしていますから、
危篤に近い重症者以外は入院が困難な現状では実施が難しい、というより一般人には不可能なのでしょう。
公式な投与済み数や状況も公表されておらず、不思議な状態です。
2. 早期投与が絶対条件のモノクローナル抗体カクテル療法
昨年夏にリジェネロン社が開発し、ロシュがFDAより緊急特認された新薬は同じく中外製薬が販売するタミフルなどのように早期投与すれば、劇的な効果が期待できるといわれます。
新コロナウィルス治療薬の大半は他の医薬品の転用ですが、新薬は今回のパンデミックに対応して開発されたもので、トランプ大統領が感染した時に使用して劇的な効果を示したといわれました。
中外製薬によれば作用機序は
「2種類の強力なウイルス中和抗体であるカシリビマブおよびイムデビマブは、ウイルスのスパイクタンパク質の受容体結合部位に非競合的に結合することで、SARS-CoV-2に対して中和活性を示し、ヒトの集団で発生したスパイクタンパク質に変異を持つウイルス株に対しても効果を示すことが期待されます」
新薬は強い副作用による腎臓、肝臓疾患の後遺症発症が予想されるステロイドのデキサメタゾン、バリシチニブなどの対症療法医薬品と異なり、
作用機序から推測しても安全性が比較的高い医薬品でしょうが、あくまでも現状は緊急の特例承認。
将来の不都合や副作用は予想できず、現在でも免疫暴走の恐れが無いとは言えないようです。
3. 超高価なモノクローナル抗体カクテル療法「カシリビマブ」と「イムデビマブ」
モノクローナル抗体カクテル療法投与の予想費用総計は抗がん剤などから推測すれば一人当たり1,000万円前後。80万円前後の新型コロナウィルス特効薬といわれるレムデシベルに較べ、はるかに高価。
それでも、打倒コロナではボタンを掛け違い、負のスパイラルに巻き込まれた政権には大きな助け舟です。
ワクチン購入だけで2兆円を超える支出に加えて、新たに20万人分を購入したと公表しています。
中外製薬から安く購入しても、投与費用総額は1兆円を超えるのではと心配になりますが20万人分ではいわゆる「雀の涙」。
買えればもっと買ったのでしょうが、7月に厚生労働省は次のように通達しています。
「全世界向けの総供給量は限られており、日本への流通量も限られたものとなります。
このため、当面の間、製造販売業者から厚生労働省が提供を受け、本剤を配分することとします」
10月13日菅前首相談:
一回分31万円で50万回分約1,550億円を購入契約したとリーク。
ブランド名「ロナプリーブ」で販売するロシュ社(中外製薬)とは価格、契約量は非公開とする秘密保持条項があるそうです。
政権の無制限とも言えるバラマキ政策が非難されている時期ですから、価格の真偽は不明です。
4. モノクローナル抗体カクテル療法医薬品はVIP専用?
購入したモノクローナル抗体カクテル療法医薬品は国民に平等に配布されるといわれます。
ところが通達を読んでみれば分かりますが、配布には厳しい条件が付いています。
供給量が少ないだけに、この条件では一般国民が使用することはまず無理。
当初から特殊な層を対象にしていると考えざるを得ません。
この療法はタミフル同様にウィルス量が少ない時期に投与する必要があります。重症患者に使用すると副作用の可能性が高くなるといわれ、それは厳禁。数少ない抗体カクテル療法専用施設は一日10人くらいの、ごく少人数しか対応できません。
新コロナ感染者を受け入れている一般の病院にも配布予定といわれますが、適格な病院はごく少なく、そこへの入院が条件の現状では、感染初期に投与することは困難です。
「重症化が予想される軽症患者」と言われても基準があいまい。
判断し難く、優先順位を院長や保健所の判断ですれば、供給量がごく少ないだけに、トラブルの元となる可能性大でしょう。
その上、誰もが知ることでしょうが、都市部のほとんどの病院、診療所は重症者で満室。
対応するスタッフも入院患者の対応で手いっぱい。
薬品点滴中の監視、ADEやサイトカインストームなど副作用への対応に数人のスタッフを配することは不可能といわれます。
結局は政治家や省庁高官、主要財界人など各所のVIP以外はお断りとなるのではと危惧されています。
5. 最新のモノクローナル抗体はシングル投与のソトロビマブ(sotrovimab)
2021年9月6日にグラクソ・スミスクライン株式会社(GSK)はAIを駆使して新薬開発をするベンチャー企業のVir Biotechnologyと共同開発したモノクローナル抗体COVID-19治療剤ソトロビマブを厚生労働省に緊急承認申請しました。
(2021年9月27日緊急承認済み)
GSKによればソトロビマブ(sotrovimab)は先例と同様な点滴静脈注入剤。モノクローナル抗体の人造中和抗体を注入します。
先回日本政府が購入したカクテル療法剤と類似作用機序を持ち、酸素療法を必要としない軽症・中等症患者用。
細かいデータは実験室レベルで得ている段階だそうですが、薬剤耐性に対する高いバリア機能を備えているといわれカナダ、
イタリアなどいくつかの国で一時的承認、オーストラリアでは承認済みだそうです。
日本では緊急承認医薬品ですから、現段階での安全性や70%を超えると言われる有効性は、メーカーの実験室でのデータによるもの。
副作用はアナフィラキシーや抗体の暴走などの可能性が否定できないようです。
先般のカクテル療法剤と同様に数百万円以上の価格が予想され、GSKは富裕層を対象としていると公言しています.
6. 参照:厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部通達
新型コロナウイルス感染症における中和抗体薬「カシリビマブ及びイムデビマブ」の医療機関への配分について(依頼)
平素より、新型コロナウイルス感染症対応に、格段の御高配を賜り、厚く御礼申し上 げます。
新型コロナウイルス感染症の患者を対象とした中和抗体薬「カシリビマブ及びイムデビマブ」(販売名:ロナプリーブ™点滴静注セット300、ロナプリーブ™点滴静注セット 1332。以下「本剤」という。)については、令和3年7月19日、新型コロナウイルス感染症の治療薬として特例承認されました。
今後、製造販売業者(「中外製薬株式会社」をいう。以下同じ。)から本剤が供給され次第、国内での使用が可能となりますが、製造販売業者が公表しているとおり、
全世界向けの総供給量は限られており、日本への流通量も限られたものとなります。
このため、当面の間、製造販売業者から厚生労働省が提供を受け、本剤を配分することとします。
つきまして、本剤の配分及び使用について下記のとおりお知らせしますので、御了知いただくとともに、貴管内の医療機関(病院・有床診療所)へ周知いただきますようお願いします。
なお、質疑応答集を別添のとおり作成しておりますのでご参照ください。
(記)
1 本剤は、現状、安定的な供給が難しいことから、一般流通は行わず、厚生労働省が 所有した上で、対象となる患者が発生した医療機関からの依頼に基づき、無償で譲渡することとしたものです。
この趣旨を踏まえ、必要以上の配分依頼、在庫の確保、投 与対象者以外への投与及び対象医療機関以外での使用は控えていただくようお願いし ます。
2 本剤の効能・効果は「SARS-CoV-2 による感染症」であり、添付文書において
「SARS-CoV-2 による感染症の重症化リスク因子を有し、酸素投与を要しない患者を対象に投与を行うこと」などとされています(以下参照)。
本剤は、現状、安定的な供給が難しいことから、当面の間、これらの患者のうち、
重症化リスクのある者として入院治療を要する者を投与対象者として配分を行うこととします。
よって、本剤の配分を受けられる医療機関は、投与対象者を入院患者として受け入れている病院又は有床診療所(以下「対象医療機関」という。)とします。
※ 「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第 5.1 版」(令和3年7月5 日)において、「リスク因子のある患者は入院の対象となる」とされている。
<参考:本剤の添付文書(抜粋)>
4.効能又は効果 SARS-CoV-2 による感染症
5.効能又は効果に関連する注意
5.1 臨床試験における主な投与経験を踏まえ、SARS-CoV-2 による感染症の重症化リスク因子を有し、酸素投与を要しない患者を対象に投与を行うこと。
5.2 高流量酸素又は人工呼吸器管理を要する患者において症状が悪化したとの報告がある。
5.3 本剤の中和活性が低い SARS-CoV-2 変異株に対しては本剤の有効性が期待できない可能性があるため、SARS-CoV-2 の最新の流行株の情報を踏まえ、本剤投与の適切性を検討すること。
6.用法及び用量 通常、成人及び 12 歳以上かつ体重 40kg 以上の小児には、カシリビマブ(遺伝子組換 え)及びイムデビマブ(遺伝子組換え)としてそれぞれ 600mg を併用により単回点滴静 注する。
7.用法及び用量に関連する注意 SARS-CoV-2 による感染症の症状が発現してから速やかに投与すること。臨床試験にお いて、症状発現から 8 日目以降に投与を開始した患者における有効性を裏付けるデータ は得られていない。 重症化リスク因子については、その代表的な例として、承認審査での評価資料となった海外第Ⅲ相試験(COV-2067 試験)の組み入れ基準、新型コロナウイルス感染症に 係る国内の主要な診療ガイドラインである「新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 診療の手引き」又は特例承認の際に根拠とした米国の緊急使用許可(EUA)において 例示されている重症化リスク因子が想定されます(下表)。これらのいずれかを有す る者であって、医師が必要と判断した者については、本剤の投与対象になり得ると考 えられますので、投与に当たって参考にしてください。
改訂版:2021/09/27