1. 緊急承認ワクチンは限定使用が本来の目的
2月17日から接種が始まったCOVID-19ワクチンは
最初に日本に到着したビオンテック社(ファイザー)製の
緊急承認ワクチン。
世界初の「革新的新技術」を使用している開発途上のワクチンで、
あくまでも大規模治験の延長線であることをメーカーも、
購入した各国政府も納得して契約しています。
緊急承認ワクチンは最終治験中のワクチンと理解すべきで、大量接種時の
データを緻密に分析して改良を加えていく段階のものです。
急を要するエッセンシャル・ワーカーはワクチン・メーカーを
選ぶわけにはいきませんから接種を始めましたが、
購入契約の詳細には触れず、あたかも完成品が届いたごとき
政府広報が始まり、報道内容は今後の輸入スケジュールと数量の話ばかり。
国民が不安に感じる副作用(副反応)は発熱、湿疹、アナフィラキシーなど
身近でわかりやすい免疫反応の説明ばかり。
海外で発生している死亡事故や重症となった反応などの踏み込んだ情報が
広報からは一切ありません。
事故との因果関係追跡に時間がかかるのは当然ですが、
学者、メディアなどを駆使して楽観論をまき散らすのは、
これまで1年間の経緯に関心を持ってきた国民には納得できない点が
多いと思います。
ワクチン事故に国民が「推定無罪」の考え方で、納得出来るはずが
ありません。疑わしき反応は些細なことでも公開すべきでしょう。
時を同じくしてボーイング777機の重大エンジン事故が報道され、
同種エンジンを搭載するすべてのB777機が運航停止となりました。
新コロナ禍で7割近い減便中のため、大きな話題とは
なりませんでしたが、同種エンジンを搭載したボーイング社の
ジャンボ機で500人以上が死亡した忌まわしい御巣鷹山の
操縦不能事故を思い起こさせました。
人命ファーストがエンジン選択に最優先されていたとは思えない
事故だったからです。
国民の命を預かる立場にある人々に、その責任感がどの程度あるのか
ボーイング機の事故はワクチンの選択に通ずる、思わぬ問題提起を
してくれました。
*2020年12月4日JAL904便で発生したエンジン発火などの不具合は
米国ユナイテッド航空での同様事故が2月20日にデンバーで
発生。間一髪で墜落事故は回避できましたが、重大事故とみなされています。
国土交通省は同日にJAL,ANAが運航している32機のB777に
運航停止措置を指示しました。
2. 国民が新技術を理解するのは困難
「集団免疫獲得には7割以上の接種が必要です。
お国のために、不透明部分には目を瞑り(つむり)、早急に接種してください。
事故が起きれば国がすべての責任を負い、賠償いたします」との政府広報が
TV放映されていますが、国民の健康や命に係わるワクチンの選択は
国民自身がワクチンの長所、短所を咀嚼し、自己責任で決めるべきでしょう。
国が選んだビオンテック社(ファイザー)やモデルナ社のワクチンは
多くの報道にある通り、革新的な新技術で製造されたものです。
将来的には世界のワクチンや難病治療薬の主流になる可能性を秘めています。
しかしながら現段階で新ワクチンに関して公表、報道される様々な効能や
統計数字はワクチン・メーカー主導の情報がほとんど。
いまだに一般の国民が新技術のネガティブ情報を得るのが困難です。
国民の安全第一を使命とする政府ならば
「予定される各種ワクチンの供給には時間がかかります。
諸外国の接種実績、成果を確認してから、選択を自己判断してください」が
本来のあるべき姿。
接種を急かして、「接種で事故が起きれば全責任は国で負います」
「接種後の死亡、入院、後遺症には手厚い賠償を保証します」
「とにかく接種を急ぎなさい」とは。
エッセンシャル・ワーカー*対象なら納得できますが
子供、孫まで遠ざけて自宅で3密を避けている後期高齢者にまで
新技術ワクチンを薦める現状には耳を疑います。
*エッセンシャル・ワーカー:医療関係者、軍隊、警察、消防など任務上、三密を避けることが
出来ない職業従事者
3. 国は確たる自信が持てる安全なワクチンを得たのか?
御巣鷹山に墜落したJAL機のP&W社製エンジンを連想させる危機管理
ワクチン選びに国は最良の選択をする義務があります。
国は接種が始まったビオンテック社(ファイザー)のワクチンが
確たる自信を持てる安全なワクチンと考えているのでしょうか?
冒頭のB777事件の問題点はJALもANAもエンジン選択が
適切だったとは言えないことです。
2月20日に危険なエンジン発火を起こし問題となっているB777のエンジンは
P&W社(プラット・アンド・ホイットニー)製ですが、
突然の操縦不能で御巣鷹山に墜落し、500名以上が遭難したJAL機に
使用されていたのもP&W社製。
戦闘機メーカーとして小型機エンジン開発は著名でも、大型旅客機分野では
GEやロールスロイスの後塵を拝している企業で、大型機のエンジン製造は
得意とは言えない企業です。
エンジンと機体のミスマッチは小型機でも大型機でも致命傷となります。
何時の時代も航空機開発でエンジン振動の処理は最大の重要点です。
JALの事故機は過去に尻もち着陸による傷を負っており、修理後は
振動が適正に吸収されていなかったといわれます。
生命を委ねる(ゆだねる)製品を選ぶ場合にコストを最重要視しては
判断を誤ります。営利企業と言えども公共性を忘れてはならないのです。
その製造に経験豊富なトップレベルの人材と実績を持つ
トップ・メーカーを選ぶことが、重要というより、必須と考えるべきですが、
ワクチンにも同様なことが要求されるでしょう。
4.緊急需要対応ワクチンに「革新的新技術」は不要
航空機や医薬品の製造において「革新的」という技術は、
長い、長い時間を経て将来、未来に実現するものです。
生命に関わるワクチンづくりは実績が最重要であり、航空機同様に
新しい手法、技術の導入は(気が遠くなるくらい)時間をかけて慎重に、
少しずつ進めるべきです。
最低でも10~15年といわれるワクチン開発は、動物実験等を繰り返し、
少しずつ規模を拡大しながらの人体実験(治験)に長い年月をかけてから
完成させています。
遅効性副作用まで考慮すれば、安全性確保には半世紀が必要です。
今回のパンデミックのように生命の危機が迫っているときに、
急を要するワクチン製造は、既存技術を基に経験と実績を持つトップ企業が
開発すべきであり、ベンチャーが開発する「革新的新技術」の
次世代ワクチンは不要です。
新コロナウィルスのパンデミックでは一刻も争う緊急開発が求められましたが、
時間がないならば手慣れた技術で開発するべきでしょう。
次世代に期待されるメッセンジャー・リボ核酸(mRNA)に
人造ウィルスなどを送り込むコンセプトそのものは古くから存在しており、
癌など難病をターゲットに開発途上の医薬品は多々ありますが、
これまでに実用化しているのは非常に小規模なものだけです。
*合成メッセンジャーリポ核酸ワクチン:
人造メッセンジャーリポ核酸:synthetic messenger RNAを使ったワクチン。
次世代ワクチンと期待されています。
「革新的新技術」は実績が少なく、未知なだけに、長い将来に予想もできない
事故発生やその後遺症の可能性を全否定はできません。
副作用(副反応)はアナフィラキシーや発熱などの免疫反応のみに焦点が
絞られているようですが、実績のない「革新的新技術」には、
それ以外の何が起きても不思議ではありません。
5.アストラゼネガ社(AZ)に注文が殺到した何故
アストラゼネガ社(AZ)に世界中から注文が殺到していますが
先鞭をつけたのは米国のトランプ大統領。
囲い込みを図るAZ社はキャパシティを大きく上回る13億人分以上の生産が
可能と豪語していますが、インドや日本など海外生産拠点が軌道に乗らねば
難しい目標です。中ソ国やファイザー社などを意識した虚勢でしょう。
SARS-CoV-2ワクチン開発に*新たなワクチン製造法(次世代ワクチン)による
大量生産の必要性を感じたトランプ大統領は2020年3月2日、ホワイトハウスに
次世代ワクチンと難病治療薬開発中の有力メーカーを招待して
COVID-19ワクチン会議を開催しています。
ホワイトハウスの会議では、米国厚生省傘下の感染症研究所などが研究している
次世代ワクチンの*合成メッセンジャーリポ核酸ワクチンの製品供給が
早ければ半年後に可能なことは判りましたが、実績がないために、
説得力のある安全性が短期間では確保できないことも判明しました。
ワクチンに詳しいトランプ大統領周辺は直ちに安全性と効能に実績のある
従来タイプのワクチン(に近い)製造法よる開発を続けるアストラゼネガ社と
ジョンソン・アンド・ジョンソン(J&J)社に注目。
アストラゼネガ社(AZ)には、AZ社が買収したアメリカのワクチン開発製造企業の
歴史が積み重なっており、製造法確立や安全性確保からも、AZ社が市場に出るのが
もっとも早いとトランプ大統領は判断したのでしょう、
AZ社には莫大な投資を約束し、見返りにアメリカ国民が必要とする量の確保をしました。
当時の安倍首相も直ちに全国民分約2,500憶円の購入を決定しています。
優劣の判断が不可能な現段階では二股掛けざるを得ないのでしょう。
三密を避けることが出来る方々は急ぐことはありません。
アストラゼネガ社(AZ)、ジョンソン・アンド・ジョンソン(J&J)社ばかりでなく
世界で大量接種が始まっているロシアのスプートニク、中国のシノバックスも
伝統的製法に準じたワクチンです。
しかしながら大量生産と効果を強めるためにベクター(ウィルスをターゲットまで運ぶ運び屋)、
アジュバンド(効果を高める増強剤)などに様々な新技術、新手法が盛り込まれており、
安全性の確認には時間がかかります。
(次回に続く)