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ケン幸田の世事・雑学閑談(千思万考)

第四十一話:「震災4年 危機管理最大の課題は「首都機能二分」 関西こそふさわしい、電力周波数も西の60ヘルツに統一を

■鴨長明「天災論」と日蓮「人災論」
東日本大震災から4年がたちました。いまだ復興が進まない被災地と被災者が受けた心身のダメージの
大きさを伝える報道を見て、胸が締め付けられる思いです。震災発生当時、宗教学者の山折哲雄氏が
「大災害に向き合う日本人の心象」と題して興味深い論を展開されておられたのを思い出しました。
ここで改めてその要旨を紹介したいと思います。
題して「鴨長明の方丈記の天災論と日蓮の立正安国論の人災論―生き方と表裏一体の議論」です。
「まず仏道に心を寄せるだけの鴨長明の簡素な草庵の世界こそ、人生の全て、宇宙の中心であった。
世間を騒がす時代の動き、人事の葛藤はすべて変化して止まない不確かなもので、
大自然の脅威(1185年京都大地震)は天災以外の何ものでもなかった」
「対する日蓮は街頭に出て辻説法を行い、政治を容赦なく批判し、法華経不信こそ社会不安や
自然災害を起こす要因であると主張。国土を襲った地震(1257年鎌倉大地震)や台風、洪水という
相次ぐ被災こそ、内乱と外敵進入(後の蒙古襲来)による危機の予兆だと警告を発した人災論であった」
「鴨長明は自然に反逆することなく、風流に生きるしたたかな最善の人生術(無常の原理)を心得ていたようだ。
一方、日蓮は自然災を一時的な試練だとし、国家や社会の危機に対して精神の純化の
重要性を声高に主張したところが大きな相違点である」(以上、筆者抜粋、要約)
■国家・文明は戦争や天災で亡びるに非ず
併せて考えさせられたのが、福沢諭吉の「慶応義塾の社中心得:実学・公智・徳心」の教えです。
「国家社会に役立つ学識、正しい選択ができる智恵、そして思いやりの心」の組み合わせがあって初めて
、巨大災害、原発問題、経済施策の復旧・復興とその先を見据えた国家振興策を論議する条件が
整ったと思う次第です。
巨大災害に見舞われた当初の漆黒の夜は、まず救助救援を通じて、自衛隊員から民間人まで、
あらゆる人々の「心の灯火が照らし出す光の輪」に始まり、次は星明りの復旧へ、さらには月明かりの
復興へと向かうとともに、その先に朝日と真昼の太陽を望む総合振興、新たな創造を伴う国家再建策があって、
初めて日本人が誇りと自信を取り戻すことができる真昼へ導くことができるのだと思います。
トインビーが明言しています。「国家や文明は戦争や天災で亡びることはない。そうした挑戦への応戦力、
チャレンジ精神喪失の結果が国や文明を滅ぼすのだ」と。
■危険性に過剰反応するばかりの原発問題
ここまで、いささか観念的な物言いになりましたが、以下、これらの思想をもとに、中長期的な視座をもっての
提言をさせていただきたいと思います。第一に、いまだに再稼働をめぐって国論が真っ二つに割れている
原発問題です。
原子力工学は日進月歩のの世界で、いまになっても異質のチェルノブイリ原発(黒鉛炉)も、
最新型軽水炉も区別なく、原発を十把一絡げで論じる昔からの反対論者、老学者や生兵法の
専門家、評論家、一部マスコミの不勉強を恐れます。同じ軽水炉タイプ原発でも、30年以上も
古い福島の「沸騰水型」と、より安全度が高く(世界的に大事故がまだ発生していない)、
原子力潜水艦や空母にも採用されている「加圧水型」(ただしコストが高い)の違い、長短、将来性などの、
十分な比較検討論がほとんど一般大衆にまで聞こえてこず、ただ危険性に過剰反応するばかりの
現状は嘆かわしい限りです。
安全再保障つきの原発と他の代替発電ソース、ブリッジエネルギー政策、それに旧来の火力、水力、
太陽(光と熱両タイプ)、風、ガスなどから、新興の液化ガス(シェールガス)やメタンハイドレイトまで、
あらゆるミックスの相互補完性と長短比較、経済性などを、すべからく論じ合っていただきたいものです。
電力といえば、日本は発電開始時(明治初期)から今に至っても二分割対立しております。非常時の
電力の融通という観点からも、東の50ヘルツ(ドイツ型)西の60ヘルツ(アメリカ型)の一元化を
再度検討していただきたいものです。(同じ電気料金なら、明るい西の電気の方がお得なはずですが…)。
■アポロ13号の教訓
福島第一原発事故のときもそうだったように、こうした危機の際には、往々にして高齢の幹部・首脳クラスが
表に引き出され、槍玉に上がるのが通例ですが、いまこそアポロ13号の危機対応の歴史を
想起すべきではないでしょうか。
人類3度目の月面着陸を目指して飛行していたクルーが、地球から33万キロもの彼方で、
船体に異常振動を感じたのは1970年4月のことでした。
地上の管制官は、二重三重の安全対策装備付き宇宙船の事ゆえ、当初さほど深刻なトラブルとも
想定していませんでした。ところが実際は、2つあった酸素タンクの両方が、そして3つあった
燃料電池の2つまでが、さらに2つあった電力供給ラインの1つが失われていたのです。
電線ショートによる酸素タンクの爆発が原因だったのでした。これは福島原発事故と
どこか類似性があるように思えます。
電力のほとんどを喪失した宇宙船をどうやってコントロールし、安全に地球へ帰すか、管制官と
宇宙船クルーはあらゆる可能性を探り、わずかな酸素や電力をやりくりし、相次ぐトラブルを克服して
奇跡的な生還を勝ち得たのでした。対処の鮮やかさから、後に「成功した失敗」と称された、
米国マネジメント能力の高さに驚嘆させられたものです。
なお、アポロ乗組員3人の飛行士を無事生還させたのは、NASAのお偉方ではなく、
現場の若い力の結集だったことを強く記憶しております。
未曾有の悲劇を、失敗を成功へ逆転できる底力を、日本の未来を担う若者にぜひ実体験して
いただきたいものです。
astronaut standing on gray sand
■これだけある「関西」が第二の首都にふさわしい理由
さて、日本の危機管理で最大の課題は東京一極集中対策でしょう。主要先進国をつぶさに眺めてみても、
政治と経済、産業と文化住居など、適度な分散を大都市間で負担しあっているようです。
日本の首都圏ほど、人口も含めてあらゆる機能の過密集中が起こっている事例は皆無といっていいでしょう。
一時の政治議題で、北関東かどこかの地方都市へ首都を移転させるといった提言もありましたが、
それより今、急ぐべきは首都機能の二分であります。その方が現実性もあり、大災害対策にも、
国防安保対策や疫病対策にも備えられるのは、細長い日本列島の東西分担制が歴史的経緯に
学んでも妥当ではないかと考える次第です。
もともと、明治まで御所は京都にあり、今も現存しています(京都人は
「天皇は東京へ行幸中」とおっしゃいます)。
古来、経済の阪神、文化の京都ともいいます。阪神大震災を乗り越えた体験も生きています。そして、
既述のような発電方式の違いで、より効率の高い60ヘルツの明るい電気が西にあります。
関西電力の原発も津波の小さい日本海側に耐震安全度が高いとされる加圧水式を主力基地としております。
しかも、阪神の良港は瀬戸内海に面しており、淡路島を隔てて太平洋にも開ける兵庫は日本海にも面し、
京都も日本海への道が開けています。有力日本企業もパナソニック・京セラ・日本電産・オムロン・
サントリー・日本生命・武田薬品・オリックス・任天堂や、住友・川崎・積水ら有力グループ諸企業等、
関西本社が多く、二百年老舗企業ともなると断然東京より多いし、さらには外資系でも米のP&G
、独のバイエル、スイスのネスレ、スゥエーデンのイケア等の世界的大企業が本拠をおいています。
さらにお笑いの吉本や宝塚歌劇、食文化、ファッションなどサブカルチャーも、東京にはない特徴を
持っております。
関空の京阪神大都市へのアクセスは成田の東京へのそれより近く、新興アジアに近い九州へも
より近い点も魅力です。
地方政治面でも、全国に先駆け、関西広域圏連携の動きがあるなど、国家及び地方再建を分かち担う
条件と意欲を備え持っていると考えられます。また大阪都構想の成り行きも注目されるところです。 

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