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危険ハーブ、覚醒剤、麻薬健康と食品の解説

アナボリックステロイド(THGなど)と アンフェタミン 型覚せい剤

2013年7月にドーピングに使われるアナボリックステロイド(蛋白同化ステロイド類)とアンフェタミン (Amphetamine) 型覚せい剤疑惑が再び米国プロスポーツ界で浮上。
メジャーリーグベースボールではヤンキースのアレックス・ロドリゲス以下20名以上が
疑惑の渦中といわれます。





1.国際オリンピック委員会が禁止するドーピング薬物

国際オリンピック委員会が禁止するドーピング薬物には、以下のものがある(京都大学体育指導センター2003年資料より)。

  • 興奮剤(アンフェタミン、フェンテルミン、メチルエフェドリン、コカイン等)
  • 麻薬(モルヒネ等)
  • 蛋白同化剤(ジヒドロテストステロン、オキシメトロン、テストステロン等)
  • β遮断剤(ベタクソロール等)
  • 利尿剤(フロセミド等)
  • 隠蔽剤(エピテストステロン)
  • ペプチドホルモン(人成長ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン等)




2.テトラハイドロゲストリノン(Tetrahydrogestrinone:THG)

テトラハイドロゲストリノン(THG) は10年前に米国メジャーリーグを大騒動に巻き込んだ空前のドーピング事件(THG事件)に関わった
カリフォルニア州バーリンガムのバルコ社(BALCO:Bay Area Laboratory Cooperative)が開発。
テトラハイドロゲストリノンは近似した分子構造を持つステロイド類のゲストリノン(Gestrinone)とトレンボロン(Trenbolone)によって合成したもの。
米国ではこのような合成ステロイドをデザイナー・ステロイド(designer steroid)と呼んでいます。
テトラハイドロゲストリノン(Tetrahydrogestrinone:THG)は従来の蛋白同化ステロイドのドーピングテストでは検出できないといわれていましたが、新しい分析方法が開発され、
IOC(International Olympic Committee)やUSADA(United States Anti-Doping Agency)によって禁止されている
アナボリックステロイド(蛋白同化ステロイド類)に分類されるべき物質であることが発見されました。

2003年8月31日までパリで開催されていた国際陸上競技連盟IAAF(International Association of Athletics Federations)主催の世界陸上競技選手権で、女子100メートル、200メートルに優勝したケリー・ホワイト(Kelli White)選手がドーピングの疑いを持たれ、メダルの剥奪が検討されています。





3.アナボリックステロイドとは

アナボリックとは同化という意味で、分解の対極にある言葉。
ステロイドは筋肉にタンパク質を同化させる蛋白同化作用を持ちますが、アナボリックステロイド(anabolic steroids)は男性の性ホルモンのアンドロゲン(androgens)に近い構造を持つ合成物質の総称で、
アンドロジェニック・アナボリック・ステロイド(androgenic anabolic steroids:男性ホルモン作用蛋白同化ステロイド)とも呼ばれます。
アナボリックステロイドには筋肉の増強作用(anabolic effects)と男性的特徴の促進作用(androgenic effects)があります。
1930年代には合成されていましたが、主として発育不全や性的不能者などの治療に用いられていました。

 

 



4.アナボリックステロイドの副作用

アナボリックステロイドは経口服用することにより、急速で、驚異的な筋肉の増強が得られますが、副作用が強いこともよく知られています。
米国の医学界ではではプロスポーツ選手を中心に多くのアナボリック・ステロイド薬害やその疑いが報告されています。
薬害の詳細は、研究途上の部分も多くありますが、現在の常習使用者の高齢化によって、
より確度の高い研究成果が得られていくことでしょう。
米国ではテニスのマッケンロー選手が暴力的に興奮しやすい、俳優のアーノルド・シュワルツネッカーが
心臓疾患を抱えているのはアナボリック・ステロイドの副作用という説もあります。
これまでに副作用として,男性は睾丸萎縮,筋肉萎縮、女性化乳房,脱毛、骨粗鬆症など,
女性は月経異常,乳房萎縮,男性化、骨粗鬆症、性器異常、また両性ともに、
めまい,吐気,頭痛,疲労,座瘡,発熱,精神異常などが報告されています。
また長期間の使用では肝臓や腎臓の障害,動脈硬化,心血管障害、白内障、緑内障、などが指摘されています.

ホルモン類は類似した分子構造をもち、アナボリック・ステロイド類はテストステロンと非常に良く似ています。
精巣や副腎は、酸素よって性ホルモンが別の性ホルモンに兌換される機能も持っており、男性ホルモンは女性ホルモンにも変換されます。
男性が女性化し、女性が男性化するのはこのためです。
市販の強壮薬などにはメチルテストステロン(テストステロンにメチル基をくっつけた合成物質)が
含まれることがありますので副作用に注意が必要です。



5.アナボリック・ステロイドとドーピングの歴史

1976年モントリオール・オリンピック大会から、アナボリック・ステロイドは禁止薬物に追加されています。
いろいろなスポーツ大会でドーピング検査が始まったのは1900年代の始めの頃ですが、
オリンピック大会でドーピング検査が実施されたのは1968年から。
ドープ(dope)という言葉はアフリカの原住民が使っていた覚醒物質が語源といわれ、米国では覚醒作用を指します。
覚醒剤、興奮剤がスポーツ界に使用された歴史は古く、1800年代にはすでにドーピング問題が発生していました。
その後1960年代ごろまでは、ドーピングには主として興奮作用、覚醒作用を起こす物質が使用され、
アンフェタミン型覚せい剤(amphetamine-type stimulant)が中心となりました。
近年になり、スポーツ生理学の発達と共に、運動機能を高めると思われる、あらゆる薬物が使用され始めましたが、
今回問題となっているアナボリック・ステロイド(蛋白同化作用剤)が多用されるようになったのは比較的最近のことです。



6.アナボリックステロイドの化学的構造と生成

ステロイドホルモンの分子構造の骨格は大別すると3種に分けられます。
その一つの男性ホルモン、アンドロゲン(androgens)は炭素19個から成るアンドロスタン骨格を持ちます。
コレステロールがテストステロンに至るまでの前駆体はプロホルモンと呼ばれます。
精巣の間質細胞にはプロゲステロン(progesteron)>>17α-ヒドロキシプロゲステロン(hydroxyprogesterone)
>>アンドロゲン(アンドロステンジオン(Androstenedione)とテストステロンTeststerone)が生成される経路があります。
またプレグネノロン(pregnenolone)>>17α-ヒドロキシプレグネノロン
>>デヒドロエピアンドロステロン(Dehydroepiandstrone)、アンドロステンジオール>>テストステロン(Teststerone)という経路もあります。
テストステロン場合は、コレステロール>>プレグネノロン(pregnenolone)>>プロゲステロン(progesterone)
>>17-ヒドロキシプロゲステロン(hydroxyprogesterone)という3つの女性ホルモン(黄体ホルモン)を経て、
アンドロステンジオン(Androstenedione)に至り、そこからテストステロン(Teststerone Androsterone)が生成される経路があります。

 

7.アンドロジェニック・アナボリック・ステロイドに分類される物質
アンドロステンジオン、19-ノルアンドロステンジアンドロステンジオ-ル、アンドロステンジオ-ル
、19-ノルアンドロステンジオン、ボラステロン、メタンジエノン、ボルデノン、メチルテストステロン、クロステボ-ル、
ナンドロロン、デヒドロクロルメチルテストステロン、ノルエタンドロロン、デヒドロエピアンドロステロン、オキサンドロロン、
ジヒドロテストステロン、オキシメステロン、フルオキシメステロン、オキシメトロン、ゲストリノン、スタノゾロ-ル、
メステロロン、テストステロン、メテノロン その他。





8.アンドロジェニック・アナボリック・ステロイドの市販されている薬品成分名と括弧内は商品名。

(ロハスケに本記事が書かれた当時2003年のデータです)

dehydrochlormethyl-testosterone (Turnibol):デヒドロクロルメチルテストステロン
metandienone (Dianabol):メタンジエノン
methyltestosterone (Android):メチルテストステロン
nandrolone phenpropionate (Durabolin):ナンドロロン。
*ナンドロロンは2001年の世界陸上でドーピングの陽性反応が伝えられたマリーン・オッティが使ったとされた。
oxandrolone (Oxandrin):オキサンドロロン
oxymetholone (Anadrol):オキシメステロン。
*オキシメステロンは最強の筋肉増強剤として最も利用されている。
副作用も最も強いといわれている。
Nolvadex (Zenecaの商品名)(成分名:tamoxifen citrate) という
抗エストロゲン剤(nonsteroidal anti-estrogen)と併用すれば安全と宣伝され、販売されていますが、
現在までの研究では安全性が確認出来ておりません。
今後数十年の人体投与の歴史で判定するしかありません。

stanozolol (Winstrol) :スタノゾロ-ル。
スタノゾロ-ルは100m競技のベン・ジョンソン(Ben Johnson)が使用したと言われている。
セタボン(Cetabon)という商品も著名。





9.アンドロステンジオン(Androstenedione)とテストステロン(Teststerone)

ホルモンにはコレステロールが原料になったものと、アミノ酸が原料になったものの2種類があります。
男性ホルモンはコレステロールが原料になったステロイドホルモンと呼ばれる物質に属し、
テストステロンとその前駆体のアンドロステンジオンが代表的なものです。
男性ホルモンの約95%はテストステロンが占めると言われています。
アンドロステンジオンは大リーガーのマーク・マグワイア選手やソーサ選手が使用していたことで有名。
マグワイア選手がロジャー・マリス選手のホームラン記録を破ったときに服用していたといわれます。





10.アンフェタミン (Amphetamine)型覚せい剤。(C6H5CH2CH(NH2)CH3)ベニー、シャブ、エクスタシーとは

アンフェタミンは硫塩酸の形で用いられ、神経および中枢ノルアドレナリン神経、ドパミン神経に作用して、それを遊離させ、
精神分裂病様の強い交感神経興奮作用と中枢興奮作用を起こします。
アンフェタミンの中枢神経興奮剤としての効果は、1934年に科学的に確認されています。
ごく微量が風邪薬に配合されることがありますが、違法なダイエット剤に食欲抑制剤とし配合され、問題となっている物質。
またストリートドラッグと呼ばれる違法覚醒剤(street drugs)の中心的物質で、アンフェタミン型覚せい剤には、
アンフェタミン、メタンフェタミン、デキストロアンフェタミン等があります。

*アンフェタミン(Amphetamine)
アンフェタミンはβ-phenylisopropylamineのラセミ体(ラセミ体というのは、二つのエナンチオマー:鏡像異性体が等量混ざっている状態)で、
スミス・クライン・フレンチ社の俗称ベニー(ベンゼドリン:Benzedrine)が著名。

*メタンフェタミン(Methamphetamine Hydrochloride)
メタンフェタミンは特に強い中枢興奮作用があり、現在ではシャブと通称されています。
エクスタシーと通称されるMDMA (34-methylenedioxymethamphetamine)。
過去にヒロポンと通称された大日本製薬のメタンフェタミン(戦時中、軍需用品として前線の兵隊や特攻隊
、軍需工場の工員に使用された)が著名。
最近のメタンフェタミンはバローズ・ウェルム社のメセドリン(Methedrine)が売られているようです。

*デキストロアンフェタミン(dextroamphetamine sulfate :d1-amphetamine sulfate)
スピードと通称されている。d体(dextro体)は力価がl体の3-4倍あります。
商品名デキセドリン(Dexedrine)。





11.モダフィニル(modafinil)

2003年8月にパリで開催された国際陸上競技連盟IAAF(International Association of Athletics Federations)主催の
世界陸上競技選手権で、女子100メートル、200メートルに優勝したケリー・ホワイト(Kelli White)選手がドーピングの疑いを持たれ、
メダルの剥奪が検討されましたが(結果は不明)彼女が使用したとされる薬品がモダフィニル。

モダフィニルはフランス製薬品の商品名。プロヴィジル(Provigil)が薬品名。
アダラフィル(adrafinil)の誘導体。中枢系のα1アドレナリン受容体刺激作用を持つ。
カテコールアミン性ニューロン活動を刺激するアンフェタミン(amphetamine)とは
作用メカニズムが異なるが、同様な覚せい剤、興奮剤といえる。
使用経験者によれば、アンフェタミンよりは作用が弱いという報告がある。
過睡眠症は不眠症(insomnia)に比べると患者総数が極端に少ないため、
モダフィニルは開発に便宜の図られる*オーファンドラッグに指定されている。
*オーファンドラッグ:必須だが受益者が少ない医薬品.開発費などが補助されることが多い.
1994年にフランスのラフォン・ラボラトリー社(Lafon Laboratories of France).が開発
1998年には米国セファロン社(Cephalon Inc).からも発売され、
日本では日本商事が米社と開発・販売権の契約を結んだ。

日本では代行輸入がされているようであるが、業者経由の場合は一日分1000円位するという。
麻薬取締法違反の恐れがあるため、厚生労働省に問い合わせてから輸入したほうが良い。
(2003年ロハスケに記事が書かれた当時のデータです)





12.ドーピングテスト(蛋白同化ステロイドの検出)

これまでスタノゾール、ナンドロロンなど蛋白同化ステロイドはガスクロマトグラフ質量分析計および
高分解能キャピラリーガスクロマトグラフ質量分析計で検出されていました。
(分析計器は1999年にヒューレットパッカード社Hewlett-Packard Companyから分社された
Agilent Technologies社などが製造しています)
2003年10月21日、カナダに本拠を置く、世界反ドーピング機構(The World Anti-Doping Agency :WADA)は、
IOCで認定されたTHGの検出法を公表。
この検出法はUCLA(a the University of California Los Angeles)のDon Catlin教授.により開発されたものです。
日本ではIOC公認ドーピング検査機関の三菱化学ビーシーエルが代行します(2003年現在)。

初版:2003年
改訂版:2013年08月10日
改訂版:2017年10月27日

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