第七十六話:「聴蟲・・月を愛で虫を聴く、まさに風流の極致」

夜の風が秋めいてくる頃、澄んだ虫の音を耳にするようになると、
しみじみと秋の到来を感じさせます。
現代人が「趣味は虫聴きです」と言えば一般的には、かなり意表を突くが、教養人からは、
風流人として一目置かれるのでしょうが、平安時代の貴族の高尚な趣味に始まり、
武家社会のすさめ事ともなり、江戸時代長く平和が続くと一般庶民の娯楽として広く流行したことから、
我が国古来の伝統文化・風流の極致であったと言えるでしょう。
 
虫聴きの遊びには、野外に出て虫を捕えて来て、鳴き声の良いものを選び、
音を競い合わせる屋内での遊びと、郊外の眺めの良い丘や土手へ出掛けて、
酒を酌み交わしながら夕暮れを待ち,昇ったばかりの名月を愛でながら、BGMとして虫の音を楽しむ場合と
二つの大きな流れがあり、「虫狩り、虫選び、虫かご、虫合わせ(鳴きを、競い合わせる)、
虫すだく(虫が多く集まって来る)、虫時雨(一斉に鳴く)、闇の虫、昼の虫」から「聴蟲」まで、
数多の季語がそれらを言い伝えております。
 
ここで、虫と言えばキリギリス、クツワムシ、ウマオイなどキリギリス科と
コオロギ、スズムシ、マツムシ、カンタン、カネタタキなどコオロギ科とあり、
虫合わせを戦わされたのは、主として後者の虫たちだったようです。

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