健康寿命を延ばす若返り(その1) 農水産生鮮食品の保健効能表示ができないわけ

2022年4月の知床半島の遭難事件は悲しい出来事でした。
この事件に限らず、中国、韓国、フィリッピンなどアジア諸国では
遊覧船、フェリー、遊漁船の事故が絶えません。
日本は世界有数の長い海岸線を持ちますが、地形に恵まれず、海運は後進国。
漁業や船舶運航のプロを除けば、海事の知識に疎い国民が多いのは
不思議ではありません。
操縦の責任者、船舶管理者の義務は法で細かく決められていますから、
若者は遊覧船の安全性に微塵も疑いを持たずに乗船したのでしょう。

知床の海難後に監督官庁は船の整備、操船者の義務などの再点検を全国に通達したようです。
法が機能していなかったことが明らかになったからです。
ただし、残念なことですが、監督省庁が検査や取り締まりを充実させるだけでは、
違法業者の事故は防止できません。
監督対象が多数に対し担当官は少数。違法を見破るには利用者自身の海事知識が必要です。
海に囲まれた日本では海事知識の普及は命を護るための必修項目。
幼少から学校や各地域で、十分な経験がある大人が教える必要があります。

知床遊覧船遭難事件は多くの方々に、(異分野とはいえ)健康を維持し、護れるのは
自分だけ、ということを再認識させてくれたのではないでしょうか。
コロナ禍の2年半で、すでに感じている方が多いとは思いますが、
自己管理によって身を護るための知識が、ますます必要となるでしょう。
 

1. 「健康長寿を達成する食生活」を妨害するのは—–

生命を維持している食生活が保健に最重要なのは言うまでもありません。
食材と食材由来の補助食品による食生活だけが細胞の炎症を防ぎ、
活性化させることが出来ますが、加工食品中心の食生活となると話は別。

安全基準が緩い日本では、加工食品の添加物、農薬、化成肥料による遺伝子変異が
20年後、30年後に表面化した疑い例が少なくありません。
様々な加工食品から発がん物質などの存在を見分けるには深い知識が必要です。
容易な目標ではありませんが、危険を避けた「安全な食生活」さえ実行できれば
「医者いらず」「薬いらず」の健康長寿は現実です。

ルーツが同じ成分ならば、摂取が少量で済む天然成分に比べて
化学合成医薬品は高単位な成分を摂取しなければ効果がありません。
必然的に代謝による腎臓、肝臓障害の副作用を避けることが出来ません。

日本は狭い国土に過密な住スタイルですから、地政学的に医者、病院、薬局が身近。
国民皆健康保険状態ですから、自己管理を怠り、医師、医薬品盲従となるのは
自然の成り行きですが、肝腎の安全性に劣るのが医薬品。
医薬品のほとんどはピンポイントで効果があるわけではありませんから、
目的外の体組織にも作用します。
生死にかかわれば当面の病魔を退治するのに副作用は覚悟の上。
即効を期待されますから一回当たりの容量が大きく、
危険も伴いますが、それは必要悪。
医薬品は痛みなどの症状が苦しい時や、死病に罹患した時に使用することに限定すべきです。
健康を損なう医薬品依存の現状を打破するために、国民が正しい食生活を実行できるように
環境を整える時期が来ています。
時代にそぐわなくなった法律も再整備が必要でしょう。身近なところでは、
現在の医薬品と補助食品の仕分け基準と食品添加物認可基準の見直し。
この二つは「健康長寿を達成する食生活」の障害となっています。
(食品添加物認可基準の問題点は次回以降のロハスケで順次ご紹介します)

最近は80才前後で老衰死と診断される人が増えています。
細胞には寿命がありますが、誰しもが予定通り細胞の終焉を迎えるわけではありません。
細胞分裂の終焉が老衰ですが、最近では老化細胞の処理と再生が行われる
メカニズムがほぼ解明されつつあり、健康長寿への道がさらに開けてきました。
(老化細胞はノギボタニカル永年のテーマの一つです.
 多くの解説がありますが、次回以降のロハスケで順次、再解説いたします)

2. 農水産生鮮食品の優れた効能が店頭表示できないわけ

100才に近づいても老衰程度が低い方は、細胞の再生と活性化に努力する
食生活を心がけている方です。
栄養成分豊富な農水畜産物は、健康長寿の元となる食生活の基盤ですが
その情報を発信すべき魚屋さん、肉屋さん、八百屋さんや食品スーパーでは
栄養成分の有用性とその効用を解説した*POPやメモ書きは非常に限られています。
消費者は別の資料で知識を得なければなりませんが、表示禁止は厚生労働省の
指示によるものです。
*POP(Point of purchase advertising)
違法な「健康を害する危険サプリメント」を取り締まるための薬事法改正時に
サプリメント(補助食品)を食品に分類し、農水産生鮮食品もサプリメントと
同等の規制を受けることとなったからです。
以来、農水産物はサプリメントと同じ傘の下にはいることとなりました。

100年くらい前の医学先進国のドイツでは6~8割くらいの医薬品が
植物由来成分の構造に基づいたもので、遺伝子解析が加速した2000年ごろまで
続いていました。
単離された天然由来の成分は医薬品合成へのヒントを与え、量産が可能になるなど、大きな役割を
持つようになり、その後は日本でも合成化学医薬品製造企業が隆盛。
保健用途として食材が果たしていた「健康な体作り」「健康長寿」「副作用の少ない疾病治癒」などの
伝統的な役割が、製薬会社には頭上の五月蝿(さばえ)になったのでしょう。

3. 食材由来が本来のサプリメント(補助食品)

くすりの起源は植物が主体で「草冠で楽になる」「薬」の字体からも
うかがうことが出来ますが、アジアの薬草バイブル「神農本草経」では
「くすり(薬)」を「上品、中品、下品」の三つに分類しています。

食材として歴史を持つ安全性の高い植物やキノコ類は「上品」に分類されて
長期療法に使用されていますが、安全性より即効性が必要な薬は
植物のアルカロイド毒がベースの対症療法で始まりました。。
「神農本草経」でアルカロイド毒は中品、下品に分類され、対症療法に
使用されることがほとんどです。
このような歴史的経緯から、サプリメントの全てを食品に区分することには大きな無理があります。
成分含有量のバラツキを避けるために栄養満載の食材を選び、
濃縮、簡便摂取、携行、保存が可能な便宜性から、素材を液状や顆粒状、
またはカプセルに封じているのがサプリメントです。

​純粋な天然由来の食材が、上品の流れを受けていれば、医薬品様の便利なカプセルに
封じ込まれていても、食材に規制、統制は全く不要なはずですが、
農薬や肥料などで健康障害が生じる可能性がありますから、
製品の監督が必要ならば農林水産省の範疇(はんちゅう)と考えています。

食材でないアルカロイド毒を持つサプリメントにはイチョウ葉エキス、マカ、ノコギリヤシ、
朝鮮人参、センナ茎、トンカット・アリ、セントジョーンズワートなど欧米、アジア各国に多数あります。
偽物、天然でない化学合成素材や医薬品が混入されている
(例:微量のマカ、朝鮮人参に粗悪なバイアグラを配合する)危険な製品が
アジアの食品市場には大量に出回っています。
アルカロイド毒で最も知られているのは青酸カリとアヘン(阿片)。
青酸カリはびわ(枇杷)の葉、アヘンは芥子(けし)の各部が生薬として使用されていました。
芥子はアヘン、ヘロインなど麻薬として使用されていますが、医療用にはモルヒネ(化学合成したもの)
として麻酔に使用されます。
ビワの葉は悪性腫瘍に使用されたことがありますが、現在の使用者はいないでしょう。
「神農本草経」を参考にした日本の医薬品段階区別は一類、二類、三類に分けられていますが
 現状のサプリメント行政は上品と下品を区別せず食品として安全性が論じられています。
食材由来サプリメントとアルカロイド毒使用サプリメントを同列に論じることはできません。
したがってサプリメントの全てを食品に区分したことには大きな無理があります。

厚生労働省は成分が類似構造式で呼称が同じならば、化学合成品と天然食材由来の相違も
区別していませんが、今後は純粋な天然由来の上品ならば農林水産省。
中品、下品は厚生労働省の監督下が望ましいと考えます。

4. 世界で生き続ける「薬食同源」

アルカロイド毒を持つ植物や、キノコ、食材由来サプリメント、動物性伝統薬は
化学合成された成分より副作用が少ないために、マイナーとはいえ東洋、西洋で
使われ続けられていますが、高価であることが多く、
毒性を制御するためには東洋医学、ハーブ医学などに通じた専門家が必要です。

時が流れ、専門家や天然原料が少なくなるとともに、安価な合成医薬品がシェアを
拡大して現在に至りますが、欧米や中国系の富裕層を中心に副作用の少ない
伝統医薬には根強い人気が続いています。

中国に「薬食同源」という言葉がありますが、中国の古い文献には見当たりません。
すべての健康は食生活によって築かれますから医食同源は永遠の真理。
したがって伝統ある食材を薬と呼んでも間違いではありませんが
逆は必ずしも真ではありません。
伝統医薬素材の相当部分は食材ともなっている素材ですが
鉱物や有毒動植物など食材としての歴史が無い素材が多数あり
それがサプリメントの市場に混入しています。
「薬食同源」の時期や語源は不明ですが、化学合成された安価な医薬品が出回り始めたころに、
歴史的、体験的(疫学的)に食生活の重要性を知る中国人が、「薬膳料理」の開発も含めて
密かに合成医薬品に抵抗した言葉かもしれません。

5.食材や食材由来サプリメントにトクホ(特保)は不要

現代のサプリメントには食品でないサプリメントが多数ありますが、
この現状を無視して食品扱いにしてしまったのは、医薬品領域の侵犯防止策
だったのでしょう。
農林、水産の食材が優れた健康食材であることは疑う余地がありません。
国民に最も必要な食の知識を、実物を見ながら容易に得ることが出来るのは
販売店の店頭
ところが薬事法改訂、危険サプリメント追放など一連の動きに便乗するかのように
健康生活推進の旗振り役である厚生労働省が、「食材の健康効能表示は違法」と公表。
生鮮食材販売店も健康志向の食材販売を促進することが不可能となりました。
食材には長い、長い摂食の歴史がありますから、安全性や効能にトクホ制定や
分子レベルの効能エビデンスは不要です
 
自然の産物は同じ種類の食材といえども、産地、生産年月により
含有有効成分やその含有量は個々に大きな相違があります。
合成で均一成分表示ができる医薬品とは全く異なる生産物。
現在の食材は薬学の範疇には入らず、比較の対象とはなりません。

サプリメントが蔓延る(はびこる)ことに医薬品企業が反対しての
政治的な立法でしょうから、その機会に一網打尽で一掃を試みたのでしょう。

中小企業排除の動きはトクホ制定につながりますが、乳酸菌や魚油など食品として
永い歴史をもつものばかり
申請できるのは安全性も効能も公知の素材ばかりですから、本来データは不必要です。
官民のメンバーらがいくつかの関連委員会を立ち上げ
あえて手数と費用(最低2,000万円くらい)が必要な証明データを要求しています。
かようなデータは「初めに答えありき」が多い分野
すでに数社が捏造などで取り消されています。

6. 健康食材を立証するのは疫学

厚生労働省がサプリメントの全てを食品扱いにし、伝統食材の有用機能表示までを
禁ずるのは「なぜか?」
その答えは「くすり(薬)も食品も歴史的に同根だった、ということを誤解した」のでは
といわれていますが、古来の薬の全てが薬食同源だったわけではありませんから
いまだに謎です。
有力な食材にはいくつもの論文や調査がありますが、少数被験者による治験や
動物実験による成果より、ふさわしいのは疫学的な評価。
分子レベルの作用機序をエヴィデンスにする必要はありません。

日本の食品の疫学研究は京都大学の家森幸男名誉教授が著名です。
WHOの委嘱で世界の長寿国を訪ね歩き、
名著「長寿の謎を解く(日本放送出版協会:NHK)」に、世界の多くの食材の有用性を
疫学的手法でレポートしています。
 

7. 食材の安全性と有用性は単離された成分からは得られません

化学が発達し始めた1800年ごろに一定の評価がある植物の有効成分を単離(抽出)して、
その構造式に従って化学合成が出来るようになりました。
単離したものは天然のまま使用しても、ベースとなった食材とは実際には似て非なるものです。
医薬品製造には革新の芽が生じたのですが、サプリメントの役には立ちません。
保健には健全な食生活と天然食材そのものの補助食品が必要な所以(ゆえん)です。

医薬品製造企業、サプリメント企業、監督官庁など行政機関とは一線を画したスタンスで著名な
津川雄介カリフォルニア大学教授の
「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事:東洋経済新報社」に、
関連した多数の記述があります。
「リコピンが有用なのではなく、トマトが有用」など、単離された有用成分は、単独では
効能や安全性の機能が発揮できないことを指摘しています。
単離してしまえば安全性、有用性も全く異なりますし、構造式通りに合成したつもりでも
鏡像異性体などで微妙に異なることも多々あります。
かっては*キラルによる重大事故発生が珍しくありませんでした。
              
*サリドマイドパラドックスを説明 ~鏡像異性体を持つ医薬品の使用に警鐘
      名古屋工業大学プレスリリース|2018年11月20日掲載

サリドマイドは,1950年代後半に四肢奇形という悲劇的薬害を引き起こしたくすりです。
当時,サリドマイドは我が国ではイソミンという名称で睡眠薬/鎮静薬として処方されました。
妊娠中の女性には対しては,つわりの軽減に効果的なくすりとして一般に広まっていきました。
ところが数年後,それまでほとんど知られていなかった手足に重篤な障害(四肢奇形)を持つ
新生児の報告が相次ぎました。
その後,この原因物質がサリドマイドであることが特定され,サリドマイドの使用が禁止されました。
しかし,皮肉なことにサリドマイドは,ハンセン病,エイズ,免疫不全症候群などの
多様な疾患治療薬になることが,その後の研究で次々と明らかとなっていきました。
現在,サリドマイドは世界各国で再認可され,多発性骨髄腫や重度のらい性結節性紅斑の治療薬として
新商標THALOMID®(日本名サレド®カプセル)として発売されています。
 サリドマイドの化学構造には,一つの不斉炭素原子があります。そのため,
アミノ酸と同じように,右手型(D体,R体)と左手型(L体,S体)の鏡像異性体が存在します。
1979年,ミュンスター大学のBlaschke教授らは,独自に開発した光学異性体分離カラムクロマトグラフィーを用いて
鏡像異性体を分離し,それぞれによる動物実験を行いました。
その結果,サリドマイドの左手型鏡像異性体にのみ催奇形性が観察され,
右手型鏡像異性体は奇形を誘発しないという実験結果を得ました(引用文献1,図1)。
この報告は医薬品開発における鏡像異性体の薬効の差異を認識させる重要な論文となり,
鏡像異性体の片方のみを選択的につくる技術「不斉合成」の発展に大きく寄与しました。

*キラル (chiral)と(ラセミ状態:racemic mixture
化学合成素材は化学式が同一でも天然とは異なります。
キラル (chiral)と呼ばれる異性体(鏡面体)の存在です。
酵素(タンパク質)に例をとれば、合成アミノ酸の異性体(鏡面体)と呼ばれる
左右のD体(dextro-rotatory)とL体(levo-rotatory) が似たような薬理作用、毒性を示す場合や、
一方だけが毒性を持つ場合があります。
また両体の作用、反作用が拮抗することで
効能が相殺されることもあります(ラセミ状態:racemic mixture)。
1960年代前後に腹痛、下痢止めの生薬となる天然素材成分を合成したところ
毒性がある異性体が合成されており、被害者が続出しました。
副作用データを隠ぺいした田辺製薬の不誠実が話題となった
整腸剤キノホルムによるスモン病(subacute myelo-optico-neuropathy:SMON)です。
今では合成医薬品開発には異性体のチェックが必ず実施されます。

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